PC-8801(SR)に関する覚え書き



The Great Stygian of Abyssさんにある情報
メモリマップ (直リンク)
I/Oマップ (直リンク)



X1シリーズが全盛だった頃の日本のClassic 8bit PCの名機は管理人にとってはPC8801SRです。
X1でもX1turboでもなく、はたまたFM77AVでもなくPC-8801SRです。
PC-8801シリーズは持っていなかったけど、PC-8801SRです。

SR登場前のPC-8801/mkIIに対してX1は、

・クリーンコンピューター設計
・メインメモリがバンク切り替え不要で高速
・カセットテープが電子メカ制御でボーレートが高速
・スーパーインポーズ機能
・PCG機能
・PSG3重和音サウンド機能搭載
・(似非)ATARI規格ジョイスティック2ポート内蔵
・GRAM同時アクセスモード

などというアドバンテージがありました。
しかし、PC-8801SRの登場によってそれは一掃されます。

PC-8801とPC-8801SRに挟んでX1を比較することで、あらためてX1の特徴に気がつきます。

・クリーンコンピューター設計
 ク リーンコンピューター設計とはBASICなどのシステムをROMで内蔵せず、カセットテープなどからRAMにロードして実行するとい うSHARPの売り文句でしたね。
 たしかに搭載RAMが少量だった頃は、そのメリットがあったのかもしれません。

 しかしX1が登場する頃には、各機種ともメインメモリは64KBytes実装されており、実質的には内蔵EP-ROMのコスト削減という意味し かありません。
 実際、PC-8801はROM-BASICにFDDのサポートが無かったため、FDD普及後はディスクからBASICをロードして実行してい て、MZやX1と何ら変わりない状況でした。
 X1turboに至ってはIPL-ROMにBIOS-ROMルーチンを忍ばせてBASICから利用するなど、思想とは逆行するような拡張が行わ れています。
 このようにX1におけるクリーンコンピュータ設計は時代遅れの思想であって、システムとしては有名無実なものでした。
 そんなことよりブートROM用ソケットをメイン基板に1つ装備してくれれば、ユーザの無駄なローディング時間をどれだけ節約できたか計り知れま せん。

・バンク切り替え不要で、メインメモリが高速
 バンク切り替えとメモリの速度は別の問題なのだが、当時はこのような言われ方をしていた気がします。
 バンク切り替えはメインメモリの一部をグラフィックRAM等に切り換えてアクセスする機能の事で、たしかにプログラムの配置制限が発生します。
 しかしZ80ではI/O空間より命令が高速な上、アドレッシングモードも豊富なので、その恩恵の方がバンクメモリの制約よりもずっと大きいので す。
 そしてX1turboはBIOS-ROMやバンクメモリのサポートによって完全なるバンク切り替えマシンになっています。にも関わらずVRAM とGRAMはI/O空間に据え置きされ、X1ユーザーはそ の足かせにずーっと悩まされ続けます。

 では、メインメモリが高速というのはなんでしょうか。
 それはPC-8801のメインメモリが低速だったことに対する比較からきています。
 PC-8801ではテキスト表示用のVRAMをメインメモリ上に持ち、随時DMACで転送していたためCPUからのメモリアクセスにウェイトが 頻発していました。
 当時はこれが一般的な回路構成でした。
 これに対してX1ではテキスト専用VRAMと専用回路を持ち、メインメモリは常にノーウェイ トでアクセスすることができました。PCG機能ばかりが強調されるX1のテキスト表示機能ですが実は回路構造そのものが秀逸だったのです。

 PC-8801SRではX1と同じようにキストVRAMはバンク切り替えの専用RAMとなり、遅 く無くなったと同時にテキストVRAMの空間が汎用RAMとして解放されました。

・カセットテープが電磁メカ制御でボーレートが速い
 ボーレートが速い事はよかったのが、皮肉にもそれがX1におけるFDDの普及を遅らる結果になってしまった。
 まぁ、電磁メカ制御はMZ/X1の特徴なので、善し悪しを付けるのは止めておこう。

 PC-8801SRではもうFDDが標準でしたから、カセットテープなんて必要なかったことでしょう。

・スーパーインポーズ機能
 それはX1ユーザーにしか分からなかっただろうが、部屋にTVがあり、某雑誌のダンプリスト入力をTVを聞きながら行える点で大変な機能だっ た。X1のパソコンテレビという肩書きは伊達じゃありません。
 しかしCPUや処理性能には一切関係がなく、電源OFFでもTVリモコンとして機能するキーボードの設計が中途半端だったので、キースキャンの 制限とサブCPUのアクセスの煩 わしさへしわ寄せが出ています。

・PCG機能
 まぁ、これについては多くを語る必要はないか。
 これがなければX1版ソーサリアンに「X1はデキがいいよ」なんてレーベルは付かなかったでしょう。
 ファミコンやアーケードのタイルマップ表示と近似した仕組みだが、これに縦横ドットスクロール機能があればなぁ..と思った人は多いでしょう。

 これはPC-8801SRでは実装されていません。X1に残った数少ないアドバンテージの一つです。

・PSG3重和音サウンド機能搭載
 3重和音といっても方形波のね。PC-8801のビープ音よりはマシですが、音楽を聞くって音じゃない。
 PC-8801SRにはPCミュージックとして花開くFM音源が内蔵されましたよ。PSG(SSG)機能も内蔵しているOPNですね。
 X1turboではFM音源はオプションで内蔵PSGとのミキシングのサポートなし。X1turboZでやっと内蔵です。

・ジョイスティック2ポート内蔵
 ATARI規格のコネクタで8ビット入出力ポートが2つ標準装備。PC-8801にそんなものはありません。
 しかしATARI規格ではなくて、電源が出てない上に入出力は同時に切り替わっちゃうのでATARI規格のトラックボールや連射パッドなんかは 使えませんでした。X1では何故ATARIに規格準拠しなかったのでしょうか?

 PC-8801SRでは1ポート標準装備されました。こちらはきっちりATARI規格だった?

・GRAM同時アクセスモード
  これはR,G,Bプレーンを同時に書き込める機能で、GRAMの画面クリアの高速化に貢献しました。
 しかし横8ドット単位に同一データの書き込みしか出来なかったので画面クリア以外の用途が皆無でした。

 これに対してPC-8801SRではマスキング描画や同時コピーなどを持つ、画期的なグラフィックALUが実装されました。
 X1turboで同様の拡張がされれば良かったのですが、それはX1turboZになっても実装されず4096色モードでは1ドットの描画に 12回もアクセスが必要という酷い事になっ ています。



このように、PC-8801SRの登場によってX1のアドバンテージのほとんどは消えてしまい、X1turboが見 た目の機能拡張に終止して処理速度を据え置いたため、処理速度の点で逆転されてしまいました。

振り返って考えるとPC-8801SRの改良の多くはX1を参考にしたんじゃないかと思えるような所がありますが、PC-8801SRのバランス はピカイチで、つくずく名機だな~と言わざるおえません。